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技術動向レポート

再生可能エネルギーの導入による経済分析の視点から

再生可能エネルギーの現状と将来(3/4)

環境エネルギー第2部
コンサルタント 佐藤 貴文  コンサルタント 古林 知哉  チーフコンサルタント 蓮見 知弘

2.再生可能エネルギーの導入に伴う経済効果

前節では、再生可能エネルギー導入のマイナス面として電気料金の上昇に伴う国民負担について述べた。その一方で、導入のプラス側面として日本全体および導入地域における経済効果が期待されている。ここでは、その効果を試算した事例として2015年度に当社が資源エネルギー庁より受託した「再生可能エネルギー等の関連産業に関する調査」のうち、(1)産業連関分析を用いた経済波及効果、(2)導入に伴う資金の流れの分析、の成果の一例を紹介する。詳細については公表されている報告書4をご参照されたい。

(1)産業連関分析を用いた経済波及効果

経済波及効果は、消費、投資等の産業に新たな需要が生じたときに、この需要をきっかけに生じた産業及び関連する他の産業への誘発額の総和である。例えば、建物の建設という新たな需要の結果、資材や電気設備・水道が必要となり、その資材や電気設備・水道を得るためには、工場での生産や発電所での電力が必要・・・というような間接的な波及すべてを含めた生産額を経済効果として試算するものである。

今回は、2030年度の見通しを達成する前提として再生可能エネルギー5電源が導入された場合、設備導入から廃棄までの経済波及効果を、産業連関表(2011年IO表の396部門統合)を用いて推計した。主な前提条件は、以下のとおりである。


  1. [1]対象電源は、2015~2030年度までに導入される再生可能エネルギー5電源とする。ただし、バイオマスの燃料は国内材を想定する。
  2. [2]経済波及効果の推計期間は、設備導入→買取期間中の発電→廃棄までとする。(最長は2030年の設備導入で20年発電し、廃棄するため2050年)
  3. [3]資本費及び運転維持費は、資源エネルギー庁の関連する審議会の値と整合させる。
  4. [4]発電事業者がメーカーに対して直接購入することを前提としており、仲介業者の影響は含まれていない。

前述の前提条件の下で推計した経済波及効果の結果を図表8に示す。この表における国内投資額は、総投資額のうち、輸入品を控除したものであり、国内で調達した設備やサービスに相当する。この図表に示したとおり、2030年度見通しを達成した場合、総投資額約28兆円のうち、太陽光発電が約14兆円(約51%)、バイオマス発電が約8.2兆円(約29%)、風力発電が約2.6兆円(約9%)となっている。その一方で、国内投資額となると、総額約22.9兆円のうち、太陽光発電が約10.8兆円(約47%)、バイオマス発電が約7.8兆円(約34%)となっている。

総投資額は、導入される設備容量の大きさと単価に影響を受けるが、国内からの調達割合を加味した国内投資額は、これら2つの要素に加えて、安価な発電設備を海外から調達すると小さくなる。産業連関分析に基づく最終的な経済波及効果は、約55.4兆円となった。

図表8 2030年度見通し達成時の再生可能エネルギー導入による経済波及効果[10億円]
図表8
(資料)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー等関連産業に関する調査」(2015年度)

(2)導入に伴う資金の流れの分析

再生可能エネルギーの導入の意義の1つとして地域活性化の視点があり、資源エネルギー庁においてもその取組が紹介されている5。そこで、FIT制度にて買取られた資金がどの地域にどの程度流れていくのかを計算するため、再生可能エネルギーの発電事業者の収支の項目がどの地域で発生するかを仮定してキャッシュフロー分析を行った。ここでの利益率は、「初期投資+O&M費」に対する利益の割合であるため、IRRとは異なる。具体的には、以下のステップに沿って分析を実施した。


  1. [1]買い取られた資金を「資本費」、「O&M費」、「廃棄費」、「税」、「利益」の5つに分ける。
  2. [2]それぞれの区分において、「関連工場」、「海外」、「自地域」、「その他」の4つに細分化する。
  3. [3][2]の結果を、最終的なお金の流れる先として設定した「自地域」、「関連工場」、「海外」、「国税」、「利益」の5つの項目で集計する。

分析にて計上している経費を上記のステップにて類型化したものを図表9に示す。

図表9 地域への波及効果分析にて計上した経費の区分
図表9
(資料)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー等関連産業に関する調査」(2015年度)をみずほ情報総研が一部修正

上記の考え方の下で分析した結果の例として、ここでは認定量が急増して国民負担への影響が大きいと考えられる10kW以上の太陽光発電および一般木質・農作物残さのバイオマス発電の2つを紹介する。ただし、後者のバイオマス発電については、燃料となる資材をすべて国内から調達しているという前提を置いている。

10kW以上の太陽光発電の結果を図表10に示す。買い取られた資金のうち、資本費が約59%、O&M費が約18%の水準になっている。また、資本費を細分化すると自地域、関連工場、海外の3つであり、それぞれがほぼ同じ割合になっている。他の項目についても同様にして細分化し、最終的に資金が流れる先として、図表10にて設定した区分ごとに集計すると、自地域に約45%、関連工場に約23%、海外に約20%の割合になる。なお、海外への分配の主な要因は、安価で調達できる海外製の太陽光パネルを事業者が選択しているためであると考えられる。

図表10 10kW以上の太陽光発電の導入に伴う地域への波及効果
図表10
(資料)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー等関連産業に関する調査」(2015年度)をみずほ情報総研が一部追記

一般木質・農作物残さのバイオマス発電の結果を図表11に示す。買い取られた資金のうち、資本費が約18%、O&M費が約76%の水準となっており、O&M費の割合が他の再生可能エネルギーに比べて突出して高くなっている。

図表11 一般木質バイオマス発電の導入に伴う地域への波及効果
図表11
(資料)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー等関連産業に関する調査」(2015年度)をみずほ情報総研が一部追記

これは、燃料の調達費用が原因である。10kW以上の太陽光発電のときと同様に、他の項目についても同様にして細分化し、最終的に資金が流れる先として、図表9にて設定した区分ごとに集計すると、自地域に約73%、関連工場に約22%、海外に約3%の割合になる。自地域の割合が高くなっている理由は、燃料となる資材をすべて国内から調達しているという前提での結果であり、輸入材を調達する場合は、自地域の割合が減り、海外の割合が増えることになる。

最後に、再生可能エネルギー5電源の地域への波及効果を総括した結果を図表12に示す。

2030年度見通しを達成するとした場合、買取費用の約5割が自地域に流れる試算結果となった。自地域にお金が流れやすいのは、大規模な造成や工事が必要となる10kW以上の太陽光発電や中小水力発電と、O&M費の大部分を占める燃料を国内から調達するバイオマス発電となる。太陽光発電や風力発電のように、発電設備等の製品市場の成熟度が上がると、コモディティー化が進み海外の安価な製品が導入されることになり、海外に資金が流れていく傾向が強くなる。

図表12 再生可能エネルギー導入に伴う買取費用の流れの割合[%]
図表12
(資料)資源エネルギー庁「再生可能エネルギー等関連産業に関する調査」(2015年度)よりみずほ情報総研作成

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