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社会動向レポート

「スポーツクリエイション」への期待と課題(1/4)

経営・ITコンサルティング部 チーフコンサルタント 宮地 英治

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催も近づき、日本におけるスポーツへの関心は高まっている。その一方で、平成29年2月に公表された「平成28年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」(以下、「世論調査」という)によると、運動・スポーツを週1回以上行う成人は42.5%に留まっており、スポーツ庁は「第2期スポーツ基本計画」(平成29年3月)の中で、この値を今後5年間で65%程度まで引き上げることを目標に掲げた。本稿では、公表されているスポーツ庁の「世論調査」の結果を詳細に分析することで、運動・スポーツを実施しない要因や背景を探るとともに、その解決アプローチの1つとして注目されている「新しくスポーツをつくる“スポーツクリエイション”」の取組みについて、先進事例を紹介しながら、そのメリットや課題、今後の展開可能性について考察する。

はじめに

政府は、これまで過去35年間にわたり、成人における週1回以上のスポーツ実施率(1)(以下、「実施率」という)を調査してきた。平成24年度までは実施率は概ね上昇傾向にあったが、ここ数年はその伸びが止まっている(図表1)。さらに、「世論調査」をもとに、性年代別に実施率を見てみると、次のような傾向がうかがえる(図表2)。

図表1 週1回以上のスポーツ実施率の推移
図表1
(資料)スポーツ庁ホームページ「成人の週1回以上のスポーツ実施率の推移及び障害者(成人)が過去1年間にスポーツ・レクリエーションを行った日数」

図表2 性年代別 週1回以上のスポーツ実施率
図表2
(資料)「平成28年度スポーツの実施状況等に関する世論調査」より筆者作成

  • 男性の実施率は、20代から50代にかけては、概ね低下傾向にあり、60代になってから急激に高まる
  • 女性の実施率は、20代から40代にかけては、男性よりも低水準で横ばいであるが、50代から急激に高まる

こうしたことから、これまでの実施率の伸びは、高齢化という人口構成の変化によってもたらされてきた一面もあると推察されるため、年代ごとの実施率の違いに着目することが重要である。スポーツ庁でも、20代から40代の実施率が他の年代に比べて低い状態にあることに問題意識を持っており、「平成28年度スポーツ政策調査研究事業(働く世代のスポーツを通じた健康増進に関する調査)」(受託事業者:みずほ情報総研)では、「働く世代」でも気軽にスポーツに取り組める環境整備の検討を進めてきた。本稿の第1章では、当該事業を受託した実績を踏まえ、世論調査をもとに、全年代について人々が実施している運動・スポーツの特性や運動・スポーツ実施の阻害要因を性年代別に考察し、その特徴を示す。

また、これまで政府は、スポーツを「する」「みる」「ささえる」の3つの視点から、スポーツ参画人口の拡大を目指す施策を実施してきたが、ここ数年、世の中では、新しくスポーツを「つくる」という「スポーツクリエイション」の取組みが生まれている。この「スポーツクリエイション」は、自分たちでスポーツを「つくる」ことにより、自分たちが関心のある趣味や領域も交えながら、自身の求める楽しみ方にあった形でスポーツに関われる。そのため、従来のスポーツにネガティブなイメージを持っていたり、無関心であったりする人にも、スポーツを始めるきっかけを与えてくれることが期待される。こうした動きは、実施率の向上にも寄与しうることから、スポーツ庁でも、平成29年度より、「スポーツ人口拡大のための官民連携プロジェクト」の一環として、「伝統的な競技種目以外にも『スポーツ』の概念を広げるとともに、『スポーツ』に対する心理的ハードルを下げる観点から、官民連携による個人の行動変容を促す新たなスポーツのスタイル等の開発を推進」するために、「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト・新たなスポーツの開発」事業(受託事業者:みずほ情報総研)を開始した。第2章では、当該事業に関わってきた経験を踏まえ、スポーツクリエイションの動向についてまとめる。

最後の第3章では、実際にスポーツクリエイションに自ら参画した経験も踏まえながら、スポーツクリエイションのメリットや課題、今後の可能性について考察する。

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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