ページの先頭です

社会動向レポート

産業廃棄物処理業の成長に資する金融面での優良性評価(1/2)

環境エネルギー第1部 シニアコンサルタント 秋山 浩之

廃棄物の排出事業者による優良な産業廃棄物処理業者の選択やその成長のためには、金融面での評価も欠かせない。そこで、その評価手法を高度化するため、類似の評価手法等を参考にして財務情報・非財務情報を組み合わせた優良性評価項目の体系化を行った。

1.はじめに

産業廃棄物処理業は、市場規模約5.3兆円、許可事業者数は約11万者(1)に上る。公表されている統計の集計区分に違いがあるため廃棄物処理業という区分となるが、売上高は、業態として比較的近い建築工事業(木造建築工事業を除く)や一般貨物自動車運送業と比べて小さいものの、倉庫業に近い。また、平均売上高11億円という事業規模が大きな母集団では、1社当たり有利子負債は5.27億円に上り、建築工事業(同)の3分の2程度である。

最近は、廃棄物処理業および関連産業のM&Aや上場などが活発化(2)しているほか、わが国の企業活動を支える環境インフラ産業としての性格を有し、今後深刻化する人材不足や事業ニーズの高度化という点から潜在的な設備投資意欲は少なくないと考えられ、金融業にとって有望な取引業種の一つになっている。

一方、このような規模と特徴を有する産業廃棄物処理業は、他業種と共通する財務的評価に加えて、環境保全とそれを支える法令順守やESG投融資等の観点から優良性評価が必要である。そこで、当社は、そうしたニーズに合った産業廃棄物処理業の企業評価手法を検討した。

本稿では、産業廃棄物処理業の優良性を評価する制度・サービスや、金融機関が企業評価を行う背景や意義を説明した上で、新たな評価項目の体系を紹介し、今後の展望を考察する。

図表1 廃棄物処理業と他産業との比較
図表1
(注)有利子負債:短期・長期借入金と社債、リース債務の合計から成り、有利子負債月商倍率から推計したもの。
(資料)産業全体:「平成28年経済センサス─活動調査」(企業等に関する集計、産業横断的集計、第1表)、集計対象1社当たり:「全国企業財務諸表分析統計 第60版」(株式会社帝国データバンク、2017年11月30日)よりみずほ情報総研株式会社作成

2.優良認定制度と財務要件

(1)優良認定制度の概要

産業廃棄物処理業者の優良性を評価する制度として、平成22年の廃棄物処理法の改正により創設された「優良産廃処理業者認定制度」(以下、「優良認定制度」)がある。これは、廃棄物の排出者(排出事業者)が優良な処理業者を選択できることを目的として導入されたもので、平成17年に導入された「優良性評価制度」が前身となっている。

優良産廃処理業者数は着実に増加し、平成28年8月末時点で1,039者に上る。この数は、全売上高のうち、産業廃棄物処理業の割合が50%以上を占める事業者数の1割程度に相当する。業種別に見ると、収集運搬業に比べて、処分業(中間処理および最終処分)の認定率が高い。

導入から10年弱が経過した優良認定制度は、見直しが検討されている。「廃棄物処理制度の見直しの方向性(意見具申)」(平成29年2月、中央環境審議会)では、認定の数と質の両面の向上が必要という認識の下、認定業者の信頼性向上や情報公表に係る事項、財務要件の見直し等の認定基準の見直し・強化、優良認定を受けた処理業者に対する優遇措置の検討等が必要とされている。

図表2 優良産廃処理業者認定制度 優良認定数の推移
図表2
(資料)中央環境審議会 廃棄物処理制度専門委員会(第8回)参考資料1(平成29年1月30日)

(2)認定基準と財務要件

優良認定の基準は以下の5つである。産業廃棄物の適正な処理に関する情報開示・ガバナンスや、環境産業としての模範性に加えて、財務要件も基準になっている。これは排出事業者が安心して廃棄物処理を委託することができるような安定した財務基盤を持つことが望ましいことから設けられた基準である。

  • 従前の産業廃棄物処理業の許可の有効期限において特定不利益処分をうけていないこと。
  • 産業廃棄物の処理状況、施設の維持管理状況などをインターネットにより一定期間、一定頻度で公表していること。
  • ISO14001、エコアクション21等の認証を取得していること。
  • 電子マニフェストシステムに加入しており、電子マニフェストが利用できること。
  • 直前3事業年度のうちいずれかの事業年度における自己資本比率が10%以上であることや、法人税等を滞納していないことなど、財務体質が健全であること。

この財務体質の健全性には、自己資本比率、税・保険料の未滞納に加えて、経常利益金額等(直前3年の各事業年度における経常利益金額等の平均値が0を超えること)、特定廃棄物最終処分場の維持管理積立金といった基準がある。

3.金融面から見た産業廃棄物処理業の企業評価

(1)銀行における格付けの実施

産業廃棄物処理業者の優良性評価は、排出事業者にとっては優良業者の選択という役割を持つ一方で、銀行にとっては貸出先のリスク評価・管理という役割がある。そして、その評価手法・結果が「格付け」である。「格付け」とは、「格付会社が企業や政府などの債券発行体の債務返済能力や、発行された債券の信用度を評価(3)」するもので、格付会社としてS&P グローバル・レーティングなどが広く知られている。さらに、「金融機関内部で、個々の債務者や取引について、信用度に応じた評価分類、管理を行う(4)」内部格付と呼ばれるものもある。すなわち、銀行は、企業の取引を行うに当たって、銀行の保有する資産が経営体力以上に毀損しないよう、貸し出し先のリスク評価を「格付け」として行っている。

さらに、[1]資本規制のリスク感応度の向上、[2]金融機関のリスク管理高度化の促進を目的として、バーゼルIIによって内部格付手法(IRB)が導入された(5)。みずほ銀行等は、信用リスクの算出に内部格付手法が選択できる内部格付手法採用行(IRB 行)となっている。

(2) 金融業における優良性評価と見直しの方向性

銀行では、このような内部格付に加えて、産業廃棄物処理業についても事業環境の分析を通じて、安定性や収益性などの財務的健全性を中心とした企業評価を行ってきた。しかし、ESGに対する関心の高まりを受けた、非財務情報を活用した産業廃棄物処理業の評価は十分とは言えない。

一方で、非財務情報に基づく産業廃棄物処理業の評価は、既に紹介した優良認定制度や、都道府県等の評価制度、民間サービスなどの類似優良性評価手法でも運用されているものの、財務分析ノウハウの活用は十分ではない。

そこで、[1]類似優良性評価手法を参考にした非財務情報の充実、[2]類似優良性評価手法への財務分析ノウハウの提供という方向性のもと、優良認定制度の見直しや、金融機関等による産業廃棄物処理業の格付手法の高度化に資することを目的として、産業廃棄物処理業の優良性評価項目を検討することとした。

  • 本レポートは当部の取引先配布資料として作成しております。本稿におけるありうる誤りはすべて筆者個人に属します。
  • レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。全ての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。

関連情報

この執筆者はこちらも執筆しています

2017年10月
静脈産業における業界再編
静脈産業における業界再編『INDUST』2017年10月号
2017年5月30日
企業経営の視点での「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」の見方
2016年11月
循環型社会の形成に向けたモデル的社会実験を通じた静脈物流に関する考察
『物流問題研究 No.65』 (流通経済大学発行)
ページの先頭へ