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社会動向レポート

中小企業におけるガイドラインの認知度調査の結果から

治療と仕事の両立支援のさらなる普及に向けた課題と提言(1/3)

社会政策コンサルティング部 チーフコンサルタント 志岐 直美

治療と仕事の両立とは、病気を抱えながらも、働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受けながら、生き生きと就労を続けられることである。治療技術の進歩等を背景に、がんをはじめとした病気を抱える労働者が増えている。労働力の高齢化に伴い、病気を抱える労働者が増えることで、治療と仕事の両立支援の必要性は今後増々高まると考えられている。本稿では、平成28年に厚生労働省において公表された事業場を対象としたガイドラインの周知・活用状況に関する実態を踏まえ、両立支援のさらなる普及に向けた課題を考察し、提言をまとめる。

1.はじめに

治療技術の進歩等を背景に、がんをはじめとした「不治の病」とされていた病気も「長く付き合う病気」になりつつあり、治療を受けながら仕事を続けることも可能になっている。一方で、がんと診断された人の約3割が離職するなど、必ずしも治療と仕事の両立支援が十分とはいえない実態も報告されている(1)

こうした中、我が国では働き方改革の柱の1つとして治療と仕事の両立を掲げており、その対策の一環として、平成28年2月には厚生労働省より「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(以下、ガイドライン)が策定・公表された(2)。このガイドラインは治療と仕事の両立に取り組もうとする企業等を対象として、両立支援の基本的な考え方や取組の方向性、留意事項を整理したものである。

治療と仕事の両立のためには、労働者本人の症状や治療の状況、業務内容に応じて、労働者、企業、医療機関をはじめとした関係者が連携して対応する必要がある。治療と仕事の両立が可能な社会の実現に向けては、企業や医療機関、労働者において両立支援の必要性や重要性が認識される必要があり、そのためにも、ガイドラインの内容を広く啓発することが求められる。

本稿では、当社が行ったガイドラインの周知・活用状況に関するアンケート調査結果を踏まえ、両立支援のさらなる普及に向けた課題を考察するとともに、今後に向けた提言をとりまとめる。

2.ガイドラインの内容

本ガイドラインは、治療が必要な労働者が業務によって疾病を増悪させることがないよう、事業場において適切な就業上の措置や治療に対する配慮が行われるようにするため、関係者の役割、事業場における環境整備、個別の労働者への支援の進め方についてまとめたものであり、その内容は厚生労働省ホームページに公開されている。

目次構成は図表1のとおりであるが、平成28年の公表以降、疾病別の留意事項として「がん」以外に「脳卒中」「肝疾患」「難病」といった疾病の情報が加えられるとともに、平成29年度には「企業・医療機関連携マニュアル」といった、両立支援を進めるうえで参考となる具体的な資料が順次追加、更新されている。

主な対象は事業者であるが、労働者や医療機関、その他両立支援の関係者においても活用可能な内容となっている。

図表1「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」の目次構成
図表1

  1. (資料)厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」

3.調査の概要

当社では平成30年12月に、事業者、労働者、医療機関等の各関係者におけるガイドラインの認知度や活用状況等の実態を明らかにすることを目的として、中小企業の経営者800人、人事労務担当者200人を対象とした「企業調査(3)」、中小企業に勤める労働者1,000人を対象とした「労働者調査(4)」、病院医師200人を対象とした「医師調査」の3種を実施した。いずれもインターネット調査会社のパネルを対象としたweb 調査により実施した。

本稿では、なかでも「企業調査」と「労働者調査」を取り上げる。

なお、本調査では便宜上、従業員数300人未満を中小企業として定義した(5)

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