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社会動向レポート

出力抑制シミュレーションによる蓄電池併設の効果の分析

再生可能エネルギーの現状と将来(2019年版)(1/4)

グローバルイノベーション&エネルギー部
コンサルタント 境澤 亮祐  コンサルタント 古林 知哉  チーフコンサルタント 蓮見 知弘


2018年10月に九州本土にて、電力の安定供給のため、地域内の発電量が需要量を上回った場合に発電量を制限する再生可能エネルギーの出力抑制が実施された。この出力抑制は、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が急増したことにより生じたものであり、九州以外でもその蓋然性は高まっている。出力抑制の回避措置として、大型蓄電池が活用されている。本レポートでは、省エネ対策として推進している住宅用太陽光発電に蓄電池を併設した自家消費利用が、どの程度出力抑制の低減に寄与するかを定量的に分析した。

1.はじめに

2012年の固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)の開始によって再生可能エネルギーの導入は急速に進んだ。今後も太陽光発電や風力発電のような天候や日照等の自然条件によって発電量が変動する電源の導入が進む傾向にある。電力会社(1)は、機器の動作不良や停電の誘発を防ぎ、電力を安定的に供給するため、常に電力の供給量と需要量を同量に保つ“同時同量の原則”を維持しなければならない。そのため、地域内の電力需要量と供給量を予測し、供給量が上回った場合は、出力を制限する要請を行っている。特に、FIT制度により全国的に太陽光発電が急増し、発電量が日中に集中する状況となったため、再生可能エネルギーの発電量を抑制する状況となった。2018年10月には、離島を除いた国内で初めてとなる出力抑制が九州で実施され1、その後、2018年度末までに26回行われた。太陽光発電の導入の急増は全国的なものであり、今後九州以外の地域でもその蓋然性が高まっている。

電力供給過剰時において、電力会社は図表1に示した優先給電ルールに則って供給量の調整を行っている。まず短時間での調整が可能な[1]バイオマス混焼を含む火力発電、[2]揚水式発電機や大型蓄電池の最大限の活用、[3]地域間連系線による他地域への融通を行う。それでも供給過剰が発生している場合は、[4]専焼バイオマス発電、[5]地域資源バイオマス発電、[6]太陽光発電・風力発電の順で実施する。原子力発電や水力発電・地熱発電は、数時間単位での調整が困難であるため抑制対象外となっている。

制度上出力抑制の頻度は、電源の種類と地域等によって異なり、抑制時間の上限を設定しない無制限抑制を前提とするものもある。その場合、再生可能エネルギー事業者にとってもファイナンスを組成する金融機関にとっても、事業性に直結するリスクの1つである。事業期間中の出力抑制の頻度を見極める必要がある。

本レポートでは、すでに導入されている大型蓄電池とは別に、国が省エネ対策として推進し、今後も導入が期待されている住宅用太陽光発電と蓄電池の併設による出力抑制の低減効果を、シミュレーションモデルを用いて分析した。また、シミュレーションの前提に用いた再生可能エネルギーの導入状況等を参考資料として示す。

図表1 優先給電ルールの概要
図表1

  1. (資料)資源エネルギー庁資料よりみずほ情報総研作成

2.出力抑制シミュレーションによる蓄電池併設の効果の分析

近年、蓄電池や電気自動車を利用した自家消費モデルが注目されている。自家消費モデルは、日中に発電した電力を蓄電し、夜間に使用することで消費者が系統から電気を購入する必要がなくなり、電気料金の負担低減につながるもので、国としても省エネ対策として推進している。2019年には、10年の買取期間を終えた住宅用太陽光発電の一部がFIT制度から卒業することもあり、売電から自家消費への移行が進むと考えられる。

出力抑制の観点からみた自家消費モデルの普及は、太陽光発電設備の導入量が圧倒的に大きく、日中に電力の供給過剰が発生しやすい傾向にあるわが国において、太陽光発電による電力供給量の平準化に寄与するため、結果的に出力抑制の低減に寄与することが期待される。

本レポートでは、出力抑制が実施された九州において、2030年の電源構成が2015年に国が掲げたエネルギーミックスを実現したという前提条件下で、住宅用太陽光発電等の普及に伴って蓄電池が住宅に併設された場合、出力抑制にどの程度影響を与えるか、当社の出力抑制シミュレーションモデル2を用いて分析した。

2.1 シミュレーションにあたっての前提条件

(1)原子力発電と再生可能エネルギーの導入量の設定

原子力発電と再生可能エネルギーの導入量は、国の定めたエネルギーミックスを達成することを前提に推計した。図表2は、原子力発電と再生可能エネルギーの導入量の2018年度の実績と2030年の見通しを示したものである。原子力発電は、現在稼働している玄海原子力発電所3、4号機、川内原子力発電所の1、2号機が引き続き稼働しているとし、原子力の発電所の新設はないとした。太陽光発電、風力発電についても、エネルギーミックスの水準を達成することを前提に導入実績や発電計画等の情報をもとに推計した。

本レポートにおいて注目する蓄電池は、住宅用太陽光発電に併設することが一般的である。住宅用太陽光発電の導入量は、すでに2030年目標に到達している(参考図表9参照)ものの、省エネ対策としてのZEH(Zero Emission House)の導入目標を踏まえると、今後も一定の新築住宅には太陽光発電が導入されるものと考えられる。そこで、政府が掲げているZEHの見通しとして、環境省の地球温暖化対策計画や内閣府の未来投資戦略2018を参考に設定した。

図表2 九州における2018年及び2030年の原子力発電と再生可能エネルギーの導入量
図表2

  1. (資料)資源エネルギー庁「固定価格買取制度情報公開用ウェブサイト」よりみずほ情報総研作成(推計を含む)

図表3 蓄電池併設時における自家消費型太陽光発電の発電量のイメージ
図表3

(2)蓄電池の併設に伴う自家消費モデルの考え方

本レポートでは、蓄電池が併設されている太陽光発電の導入量を[1]併設なし(蓄電池の影響を考慮しない)、[2]100万kW(現在の住宅用太陽光発電の約6割相当)、[3]200万kW、の3つのシナリオを設定し、太陽光発電の出力抑制の影響を分析した。蓄電池の導入によって平準化される住宅用太陽光発電の発電量を図表3に示す。蓄電池を併設する住宅用太陽光発電の割合が増えると、日中の発電量ピークが蓄電によって減少する代わりに、夜間で蓄えた電力が利用されるため、太陽光の出力パターンを図表3のように考えることができる。

(3)前提条件のまとめ

本レポートで実施した計算条件を整理したものを図表4に示す。出力抑制に大きな影響を及ぼす地域間連系線の容量は、経済産業省の審議会である系統ワーキンググループ(第18回)において九州電力が設定した容量の50%(67.5万kW)を活用可能とした3。なお、図表4の計算条件は、同ワーキンググループにおいて九州電力が設定した条件とは異なることに留意されたい。

図表4 計算条件のまとめ(2030年度の九州地域)
図表4

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