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社会動向レポート

オールハザードBCPへの転換

アフターコロナのBCP(3/3)

経営・ITコンサルティング部 IT戦略チーム シニアコンサルタント 鈴木 大介

3.新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCPに関する調査の結果について(続き)

(3)With/Afterコロナにおける課題とニーズ

コロナ禍を経て、各企業が課題としている事項では、「2020年度の経営計画の見直し」や「中期経営計画の見直し」、「設備投資計画の見直し」、「人員計画の見直し」などを考える企業(「とても当てはまる」、「やや当てはまる」の合計値)が約50%~60%となった。これは、コロナ禍による減収・減益が一因であることは想像に難くない。そのほかに多くの企業が経営課題としてとらえている事項には、「人事制度の見直し」(65.3%)や「受発注手続きのデジタル化」(47.5%)、「営業チャネルのオンライン化」(45.7%)が挙げられる。これは、コロナ禍により多くの企業が導入したテレワークなどの新たな働き方を最大限に活用するため、対面での業務から非対面での業務へシフトするための環境整備が必要であると考える企業が多いことの表れではないかと考える(図表10)。

また、具体的な対策導入に関するニーズについては、「ネットワーク環境の増強」(55.7%)や「社内手続きの電子化、ハンコレス化」(54.7%)、「電子契約」(54.3%)、「情報セキュリティの見直し・強化」(53.1%)の導入を検討している(「2020年度中に実施・導入を予定」、「2~3年以内に実施・導入を予定」、「導入・実施したいが、計画は未定」の合計値)企業がいずれも50%を超える結果となった。これらの対策については、前述のテレワークを実施した結果明らかとなった課題(図表5)を改善し、日常的にテレワークを活用していくための環境整備が必要であると各企業が考えている結果の表れであると考える(図表11)。


図表10 コロナ禍を踏まえた経営課題
図表10

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)

図表11 コロナ禍を踏まえて導入を考える対策
図表11

  1. (資料)みずほ情報総研「新型コロナウイルス感染症流行を踏まえたBCP に関する調査」(2020年9月)

4.With/AfterコロナのBCPに対する考察

本調査の結果を踏まえ、今後企業においてBCPを策定する、あるいは見直しする際に考慮すべきポイントを以下に提示する。

(1)「事象特定型BCP」から「オールハザード型BCP」へ

コロナ禍において自社のBCPが「効果的に機能した」との回答は約17%にとどまり、「機能しなかった」との評価が約28%にのぼる(図表8)。BCPが機能しなかった理由としては、「自社BCPでは想定外であった」とする意見が多くを占め、全世界規模で長期的に影響を及ぼす新型コロナウイルス感染症に対して、既存のBCPでは十分な対応を講じることが困難であったことが推察される。

このことから、企業においては、既存のBCPを見直し、従来のように地震や風水害などの特定事象にのみ対応したBCPではなく、さまざまなリスクに包括的に対応できる「オールハザード型」へと転換していく必要性が従来以上に高まっているといえる。本調査の結果からも、今回のコロナ禍を踏まえてBCPを策定・見直しした企業において感染症以外のリスクにも検討の対象を拡大している傾向が明らかになっており、オールハザード型を意識したBCPの策定が進みつつある表れではないかと考える。

オールハザード型BCPにより、様々なリスクへの対応力を身につけ、「想定外」を無くしていくことが、With/Afterコロナの社会におけるBCPに求められた役割であると考える。

(2) 中長期的な対応と企業戦略としての「レジリエンス」が課題

COVID-19のパンデミックにより、グローバルレベルでサプライチェーンの混乱に見舞われた企業も少なくない。こうした状況において、一部の企業では、「海外生産拠点の切り替え」「物流経路・方法の変更」「原材料・部材在庫・商品在庫の積み増し」「新規事業への参入」といった企業戦略そのものに大きな影響を及ぼす取り組みに着手している。こうした企業の70%以上が自社の対応を効果的だったと評価(図表3)しており、多くの企業においても中長期的視点から取り組むべき課題であると考える。

企業が直面するリスクはますます多様化している。With/Afterコロナの社会は、Beforeコロナに戻るのではなく、新たな環境にシフトすると考えるべきである。企業は、不測の事態に直面した状況において、これまでの常識や基準によらない判断が求められることになる。危機に直面した際、これに柔軟に対応し、最終的には成長につなげるために、危機的な事象の発生への対応力・回復力・弾力性を意味する「レジリエンス」の概念を企業戦略に組み込んでいくことが求められる。

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