Introduction

近年さまざまな業界においてAIに対するニーズが高まっている。当社ではコンサルティングやシステムインテグレーションを通じてお客さまの多様な課題に対応するのみならず、AIの利活用を通じたより一層の価値提供を目指し、その取り組みを推進、強化している。ここでは、数値シミュレーションを用いたコンサルティングを行ってきた二人に、AI・機械学習を活用した新たな取り組みについて聞いていく。

エネルギー分野(新エネルギー・省エネルギー・非在来型資源)、ものづくり分野(エネルギーデバイス、車載機器など)において、シミュレーションを用いた調査・コンサルティング業務に従事。

材料・創薬分野で機械学習を活用したシミュレーション技術の開発・解析業務、技術調査業務に従事。調査業務では、研究機関・大学研究者との接点を活かした技術提案、営業活動も行っている。

長年にわたって
蓄積された知見を活かし、
ものづくり分野へ
AI導入を推進。

Question どのような業務を行っているか教えてください。

  • 仮屋

    私はエネルギー・ものづくり分野で、主に二つの業務を担当しています。
    一つは、研究機関や企業のお客さまに対する、ものづくりの効率化に向けたシミュレーション技術の提供や、技術を利活用するための支援です。機械・輸送機器関連や燃料電池等のエネルギーデバイス、エレクトロニクス等、幅広い分野のお客さまと仕事をしています。
    もう一つは、官公庁や企業をお客さまとして行う、科学技術計算に関する諸外国の政策・制度や技術動向に関する調査です。調査結果に基づいて、政策提言を行うこともあります。

  • 石田

    私が担当しているのは、新薬の候補物質を探索するための計算技術の開発です。人体のタンパク質を形成する何万もの原子は常に動いています。創薬の現場、あるいは薬剤候補物質の設計においては、薬理作用のターゲットとなるタンパク質や低分子がどのように運動しているのかを分子動力学法と呼ばれる計算手法でシミュレーションすることで、薬剤の作用を解析しています。私はメーカーや研究所からの依頼を受けて、シミュレーション技術の開発・解析を行っています。

Question AI・機械学習を活用する取り組みについて教えてください。

  • 仮屋

    ものづくりやエネルギー分野にて技術開発に携わる中で、AIを導入する動きが活発化しているのを感じていました。
    ものづくりにおいては、例えば製品の性能予測などへのAI活用で製造工程の高度化が図れます。エネルギー分野については、「低炭素化」「脱炭素化」の機運の高まりに併せて安定的で効率的な再生可能エネルギーへ注目が集まる中で、発電量の需給予測や発電設備の最適化をシミュレーションするにあたってAIが活用できると考えられます。
    そんな中、上司から社内制度である「チャレンジ投資制度」の紹介がありました。「チャレンジ投資制度」は若手社員を中心に、一定の裁量を与えられ、新しい事業の創出に向けた研究・開発ができる制度です。これまで取り組んできた分野でのAIの活用可能性を模索したい、そして自らの専門性をさらに高めていきたいと考えていたのでこの制度に応募し、結果として採用されたことが、AI活用に取り組むきっかけとなりました。

    私は将来の新エネルギーの導入拡大を目指して、AI・機械学習をはじめとした技術を活用してどのようなアプローチをすることができるか、というテーマに取り組みました。
    技術や社会の動向を探る中で、近年関心が高まっている分散型エネルギー*の活用において、発電設備や蓄エネ機器を上手く組み合わせた、効率的・経済的なエネルギーシステムの構築が重要であることに注目しました。最適な組み合わせをシミュレーションするにあたって、AI・機械学習や数理最適化といった技術が重要な役割を担うのではないか、と考え、技術開発に着手しました。
    AI・機械学習に関する技術習得に取り組み、実際に手を動かしてシミュレーションを行い、結果の整理や社外への情報発信まで行いました。それをきっかけに社外の方から興味を持っていただき、仕事の引き合いを頂くこともありました。

  • 石田

    私が携わっている創薬分野の分子動力学シミュレーションにおいて、薬理作用による物理現象を再現するには、何万個もの分子の、数千万回の計算が必要になります。その計算のために、これまで採用されていたのがスーパーコンピュータです。
    しかしながらこの計算は負荷が高く、膨大な計算資源が必要となるため、スーパーコンピュータを用いてもなお、計算には1週間から10日、場合によっては1カ月ほどの時間が必要でした。そこで、AI導入によって計算負荷を軽減し、計算の高精度化・高速化を両立する手法を開発する取り組みを進めています。
    具体的には、AIにシミュレーションデータを反復的に学習させることで、シミュレーション結果を予測できるモデル構築を行っています。
    現在は、タンパク質や分子の動きのシミュレーションにおいて、機械学習を用いた予測が可能なモデル構築・シミュレータの開発が実現できました。
    さらに発展的な取り組みとして、人体を形成するさまざまな分子=生体分子のエネルギーや振る舞いについても、従来の長時間・大規模なシミュレーションの予測精度をAIで実現することを目指しています。
    生体分子のエネルギーの高精度予測は、学習させるデータ自体の精度が求められますし、広く深く、AIに学習させる必要があります。極めて高難度な取り組みだと感じていますが、積極的にチャレンジしていきたいと思っています。

    *分散型エネルギー:比較的小規模で、かつさまざまな地域に分散しているエネルギーの総称であり、従来の大規模・集中型エネルギーに対する相対的な概念

Question 今後の目標を教えてください。

  • 仮屋

    今回取り組んだエネルギー分野へのAIの適用に限らず、一連の取り組みを通じて得られた技術は、その他の領域にも活用できるものだと考えています。今後はより広い領域で、技術の活用の可能性について探りたいと考えています。
    また、引き続きAI・機械学習についてはさらに技術を深く理解して研鑽し、より良い技術活用ができるようになりたいと考え、現在大学院で統計学・機械学習の理論について博士号取得を目指しています。
    一方で、技術の利活用や適用それ自体が目的化することのないようにしたいとも考えています。技術をどのように活用すれば、「価値」や「新しさ」が提供できるか。そこをぶれずに追求することが重要だと思いますし、それが実現できる人材に成長していきたいと考えています。

  • 石田

    AI・機械学習に関して言えば、急速な技術発展によって、さまざまな場面で活用しやすくなっていると感じています。しかしながら、果たしてそれが競争力の源泉になりえているのかどうか。私はAIを用いたビジネスを行っていくにあたって、さまざまな業種・業界の企業が連携し、それぞれの強みを活かしながらビジネスにつなげていく「エコシステム」が重要だと考えています。自身もそういったオープンな連携の中で、IT技術を駆使して新たな付加価値を生み出し、科学技術計算の分野のさらなる進化に貢献していきたいと思います。

※所属部署は取材当時のものになります。